2013/08/11

イラストサイトの話


かつて、アマチュアイラスト個人HPには夢があふれていました。
クソみたいなページも信じられないほどたくさんありましたが、一部の面白い、良い絵を描く人のHPは他を圧倒し、独自のコミュニティを築いていました。

しかし、Pixivが登場します。



分かりやすい点数+ブクマ制による評価と、それを元にしたランキングで競争が煽られ、とても盛り上がりました。ネットで有名だった多くの絵描きさんがランキングを賑わせて、会員数はどんどん増えました。

みんな個人HPなんか見なくなってしまったので、結果的にはPixivが個人イラストサイトを駆逐した形になりました。今ネットに残っているのは依頼者向けのポートフォリオと、その成り損ないです。

しかし、Pixiv開設2年後?くらいから、当のPixivも盛り下がっているように感じます。
具体的にはオリジナルで面白いもの、新しいものをあまり見なくなってしまいました。

Pixivだけが原因とは思いませんが、ちょっと考えてみました。



イラストの個人HPは、かつてはPixivなどの機能を一部内包していました。
分かりやすい点数などはありませんが、評価の高いイラストサイトは他のサイトで言及されたりリンクを貼られたりすることも多く、また社交的な人の場合はHP内に他のイラストサイトの人の話や合作なんかが掲載されていて、それらを総合することで、なんとなく各絵描きさんのつながりが見えてきたり、自分の評価やイメージが定まっていったものでした。

かつてのイラストサイトでは「有名な絵描きさんに評価されて言及される=良いこと」でした。
リンクをはってもらったり、合作したり、仲良くなったりするのがみんなの夢でした。
つまり、良い絵を描ける人がキュレーションする、良い物を選ぶ世界だったのです。

現在のネットはどうでしょうか?
PixivにしろBlogにしろSNSの中で評価を決めるのは数です。
「より多くの一般人に支持される=良いこと」なのです。



Tumblrで読んだ話にこんなものがあります。
「就職して数年間真面目に働いた人が日経新聞を読む。一見それらしいことが書いてあるのだが、自分の業界の話を読むと、どうにも見当はずれなことしか書いていない。普通はそう感じる。もしそう感じないなら、あなたはその業界で正しく成長できていないのだ。」というものです。

プロと素人の評価は完全に違います。
同じ物を評価することはあっても、評価している部分は違うはずです。

本来、ある業界が正しく成長するにはどちらの評価も重要です。
プロの評価は若手の育成のために。素人の評価はその業界の隆盛のために必要なのです。



現在のイラスト界隈では、PixivやTwitterなどが評価やコミュニケーションを強力にサポートするため、各個人HPから、かつてあった交流やコミュニケーションの部分が大幅に削られてしまいました。PixivやTwitterでの評価は素人の評価です。そして、かつてあったイラストサイトの横の繋がりによるプロや玄人の評価はもはや存在しないのです。

というわけで、Pixivによりいっときアマチュアイラスト業界が隆盛しましたが、若手育成のためのプロの評価がないので若手が育たず、とっても面白みのないインターネットができあがってしまいました。



分かりやすい所ではオリジナルで面白い絵を描いていた人が、Pixivはじめて最終的にはエロ同人で生計を立てようとしていたり、同じく良い絵を描くポテンシャルがある人が、どんどんソシャゲ絵に流れたりしています。

Pixivが盛り上がっていた時期というのは、Pixiv以前に実力をつけていた人がPixivで評価されていた+Pixivに適応した新しい人が評価されていた。ように思います。

Pixivが盛り下がったのは、Pixivで育つ人の幅が少ない+他に育つ場所がない。の合わせ技でしょう。しかもその少ない幅は素人受けに向けられています。これではある程度努力して玄人になった人は楽しくないだろうなーと思います。



探せばいいという意見もあるかもしれませんが、以前はもっと簡単に新しくて変わっていて面白いものが見つかっていました。

今後もし状況が変わるとすれば「プロの評価を基準にした、人の集まる場所」ができた時、ではないでしょうか。なかなか難しそうですが、是非以前のような夢のある世界に戻って欲しいです。ネットサーフィンを全力で楽しみてえよ。



注2:文中で「玄人」の意味でプロという言葉を使っている部分があります。



・追記
日経新聞の話ですが、イラストに例えるとネットにあるイラスト上達系小技まとめ!とか、イラストがうまくなるにはまとめ!みたいなやつです。クソみたいなことしか書いてないです。でもそれは当たり前で、あの文章は多数派の絵が下手な人、絵にそんなに時間をかけてない人向けの文章だからです。ああいうのに感銘を受けてるようじゃ先は長いです。


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